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メンタルコラム

第5回

買い物をやめられない

会社員のトモミさん(25)はうつむいて診祭室に入って来ると、「私、買い物依存症だと思う」と話し始めました。
サラリーマン家庭でしつけは厳しく、欲しい物は誕生日とクリスマスにしか買ってもらえませんでした。大学でも、友人はブランド品を持っていましたが、バイト代で買った物を大事に使っていました。
インテリアの仕事をしたくて建築士の資格を取ったが、就職難で事務職に就きました。社員の大半は40代の男性で、外回りが多く、昼は年上の女性と留守番。補佐的な仕事で、夢見ていたOL生活とは大違いだったのです。

やがて、トモミさんは買い物でストレスを解消するようになりました。有名ブランド店では店員が親切にしてくれます。「すてきな服を着て鏡で見ると、自分のためにあるように思えて、どんどん買ってしまった」といいます。部屋には何十万円もするブランド品があふれるようになりました。
買い物のことばかり考えているので仕事でミスも出ました。貯金は使い果たし、カードローンは限界を超え、消費者金融にも手を出してしまいました。ローン返済のために競馬や株も始めたが、さらに借金はたまっていったのです。
買い物をやめたいという欲求と借金の不安でどうしようもなくなった時、雑誌で「買い物依存症」という言葉を見つけました。

診察ではまず、何が原因か一緒に考えようと提案しました。そして「経済的なことは、両親に打ち明けて、相談に乗ってもらおう」と話しました。不安を和らげる薬も補助的に使いながら、カウンセリングを続けるうち、トモミさんは両親への思いや仕事への不満を話すようになっていきました。
トモミさんは半年ほどして、白シャツにジーパンという質素な姿で現れました。会社は辞め、ウェートレスをしているといいます。
「ストレスによる病気と診断されてはっとした。母には泣かれたが、貯金を出してくれた。残りは破産手続きをとった。そこまでいって、自分の状態が恐ろしいものだとわかった」とばつが悪そうに笑いました。

トモミさんのように、日常すべてがあるものを中心に回り始めて、心理的、身体的、社会的に問題を起こす結果がわかっているのにやめられないなどがあると「依存症」と診断されます。
悪循環を断つには自分の状態に気づくことが第一です。背景にあるストレスの原因を知り、取り除く工夫をします。心の中を打ち明けられる相手を見つけることも大切です。

髙橋顧問(前院長)が朝日新聞にて2002年に連載した、女性のこころの健康状態にスポットをあてた「こころ元気ですか~女性編」に一部加筆、修正を加えたものです。
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